竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜



 こちら基準ではシンプルらしいけど、私には十分高価だ。きっと見る人によっては、この護符の刺繍も凄い技術だとわかるはず。また変な噂が立たないといいけど……。そんな心配をしていると、リディアさんはニッコリ笑って否定した。


「それは大丈夫です。昨日竜王様もアビゲイル様との面会に入ってきて、ご自身で否定されましたでしょう? 竜王様の言葉はもう貴族内で広まっていますから、噂は落ち着きましたよ。竜王様もそのために、わざわざいらっしゃったのですから」

「え? 昨日竜王様が来たのは、噂を否定するためだったのですか?」
「はい、あのお二人の会話で重要だったのは、最後にリコに話しかけた言葉だけです」


 最後に話しかけた言葉? あの二人はずっとアビゲイル様のお父さんの話をしていたのよね。それで最後……。


「くだらない噂に振り回されて疲れただろうと、言ったアレですか?」
「そうです。通常竜王様への面会は複雑な手続きが必要ですから、当日にはお会いできません。ですから竜王様が部屋にいらして、否定した言葉を言ったというのは、それだけ大ごとなんです」