「龍雅、俺を本気で殴ってくれてありがとう。俺に怒鳴りつけてくれてありがとう。おかげで目が覚めた。覚悟ができたんだ。今度こそ、俺が芽衣を支えたいんだ」



真っ直ぐに龍雅を見つめて言うと、龍雅はしばらく見つめ返した後に諦めたようにフッと笑う。



「……あー、馬鹿馬鹿しい。なんだよ、二人揃って俺にお礼なんて言うなよ。本当、お前ら似た者同士すぎるんだよ……」


「龍雅」


「行けよ。まだ間に合うはずだから。早く行かないと、花火大会が終わっちまう。そうしたら、もう本当に終わりだ」


「……龍雅、ありがとう!」


「っ……帰ってきたらアイス一ヶ月分奢らせるからな! 芽衣のこと泣かせたら許さねぇからな!」



龍雅の声を背中に浴び、片手で返事をして走り出す。



「アイス一ヶ月分じゃ足りねぇくらいだよ……」



思わず笑いが込み上げてしまったのは、龍雅はやっぱり龍雅だと思ったからかもしれない。


龍雅が、昔から芽衣に対して幼馴染以上の感情を持っていることは気付いていた。


だけど、俺も芽衣に対して同じ気持ちを持っていたから、譲る気なんてさらさら無かった。


だけど、この二年間で龍雅は頼れるかっこいい男になった。俺なんか、比べるにも値しないくらいだ。


だけど自分の気持ちを押し殺して俺の背中を押してくれた龍雅。


もしかしたら、まだ俺にも望みがあるのかもしれない。


ありがとう。ありがとう、龍雅。


どんな結果になろうとも、落ち着いたら食べきれないほどのアイスを買ってやるよ。


だから、また昔みたいに芽衣と三人でアイスを食べような。


心の中でもう一度龍雅にお礼を告げて、俺は今度こそ芽衣を探しに事故現場に向けて走って行った。