「大雅の気持ちも、わからないわけじゃない。大雅は大雅でずっと苦しんでたの、透から聞いてたから知ってた」


「……」


「だけど、わたしはこの二年、ずっと一番近くで芽衣を見守ってきた」



目の前のカフェラテが無くなりそうになったころ、紫苑の言葉にふと顔を上げた。



「芽衣が一番苦しい時を、ずっと隣で見てきた」



憂を帯びた表情には、さまざまな感情が見え隠れしていて。


八の字になった眉が困っているような、どこか呆れているような。それなのに切ない顔をしている。


潤んでいる大きな目が、俺をまっすぐ見つめた。



「大雅に酷いこと言われても、芽衣はわたしの前では絶対泣かなかった。むしろ心配かけないように、"また明日の朝頑張って声かけてみる"って……笑ってた。今までどんなことがあっても必ず毎朝大雅の家の前にいたのに、最近じゃあ"もういいの"って言って、誰よりも早く登校してる。わたしが声をかけても、泣きそうに笑うだけなの。そんな芽衣を見てるのがつらかったし、痛々しくて。正直言えば、大雅を恨んだりしたこともあった。大雅が全てを思い出したら、一発殴ってやろうとも思ってた」



紫苑の言葉に何度も頷く。