全てを思い出してから、二週間と少し経過した。


梅雨も明け、太陽がジリジリと照りつける。


あれから三者面談を適当に終えて、すぐに夏休みに入った。


クラスの皆は海だの山だの花火だのキャンプだのと騒いでいたけれど、俺はどこにも行かずに引きこもり、外出と言えば検査やらなんやらで定期的に病院に通っているくらいだ。


いつもは母さんがついてくるけれど、今日は仕事だからと俺一人で来た。


今日もどこか他人事のように感じているうちに診察は全て終わっていて、気が付けば俺は病院の外に立っていた。異常が見られないため、特別変わったことがなければ今回の診察で終わりだと言われた。



"記憶が戻って良かった"



医者から言われた言葉が、頭の中をぐるぐる回る。


記憶が戻ったことによりカウンセラーのパンフレットも渡されたけれど、病院のゴミ箱に捨ててきた。


病院の正面にある時計を見ると病院に着いた時から数時間経過していて、どれくらいボーッとしていたのか正気に戻った時には空には綺麗な夕焼けが広がっていた。


なんの因果だろうか。それは、二年前記憶を無くす前と同じ空に見えた。



「……芽衣」



自分でも無意識のうちに呟いていた名前。


それにどうしようもなく胸を痛めていた時、



「──あれ?大雅?」



どこか懐かしさを覚える声が聞こえた。