事の起こりは、アロイージ王国がバリオーニ帝国との協定を破ったことだった。それを取り繕うのに嘘と言い訳を並べ立てた。当然、関係は悪化してしまう。

 同時期、バリオーニ帝国の友好国がドラーギ国に攻め入られ、バリオーニ帝国軍がドラーギ国に攻め入り、あっという間に国都を陥落させてしまった。

 バリオーニ帝国は、ドラーギ国に攻め入るときには別の国を通過した。それが最短ルートだから。しかし、帰還するのに時間の制約はない。わざとわが国の領土を通過し、脅しをかけようとしているのに違いない。

 バリオーニ帝国軍がやって来たのは、わたしが竜帝に嫁ぐよう命じられた数日後だった。

 竜帝の噂は、うんざりするほど耳に入っている。

 そのどれもが怖ろしいものばかり。一つとしていいものはない。

 謁見の間に現れた竜帝は、はっきり言って異様な出で立ちだった。

 長身で筋肉質っぽい体を鎧に包み、黒いマントを翻している。

 なにより、銀色の仮面が怖すぎる。

 謁見の間にある高窓から射し込む陽の光が、その銀色の仮面に反射してよりいっそう仮面を異様なものに見せている。