亜子は仕事をしながらも、家事や育児をテキパキとこなしている。座っているところを見たことがないほど、亜子はいつも動いている。そのことを裕也は誇りに思っていた。

(会社の同僚の奴ら、みんな羨ましがってるからな〜。他の家は家事に手を抜いたり、育児を手伝うよう言われるけど、うちはそんなことないからな〜)

家事も育児も裕也が気が付けば終わっている。子どもが裕也よりも亜子に懐いているものの、裕也はそれほど気にしてはいなかった。

(やっぱり、子どもには母親だよな〜)

電車を降り、家へと歩く。のんびりと歩いていると、スマホがピロンと音を立てた。部長からである。

『尾崎くん、来週の日曜日もよかったら一緒にゴルフに行かないか?他の奴を誘っても、みんな「子どもを遊びに連れてくので」ってそればっかりでな』

最近離婚したばかりの部長は、裕也をこうして毎週のように飲み会やゴルフ、釣りに誘ってくれる。上司に気に入られているということは、出世の近道になることは今でも暗黙の了解だ。裕也は喜びを覚えながら返信する。