「結婚したら、どのような家庭を作りたいですか?」

幸せが溢れる門出の時、披露宴会場で司会者からマイクを尾崎裕也(おざきゆうや)は向けられて訊ねられる。タキシードを着た裕也の隣には、綺麗なカラードレスを着て先ほど永遠を誓った妻の亜子(あこ)が微笑んでいる。

「幸せで温かい、みんなに理想と思ってもらえるような家庭を二人で作っていきたいです」

少し照れながら裕也が答えると、披露宴会場に拍手と歓声が響く。亜子は頰を赤く染め、手で顔を覆う。

「裕也、かっけ〜!」

「幸せにするんだぞ!」

「亜子、こんな素敵な旦那さんでよかったね〜!」

「お幸せに!」

披露宴に来てくれた友人や会社の人たちが口々に言い、裕也は「もちろんです!」と言いながら亜子の肩を抱く。

幸せな家庭を作る一歩を、二人は踏み出したのだ。



それから六年後、裕也は幸せな家庭を築いていることに満足しながら毎日を過ごしている。

結婚をした後、裕也の両親がお金を出して裕也の実家の近くに家を建ててくれた。一軒家に裕也は、六歳の娘の真奈(まな)と今年に入って産まれたばかりの息子の実(みのる)と暮らしている。