こんなことになるなら、もっと早くこの気持ちを伝えていればよかった。そんな後悔が白馬凌(はくばりょう)の中に生まれていた。

穏やかな日曜日の午後、おしゃれなカフェのテラス席に座る凌の目の前には、金髪碧眼の綺麗な女性がいる。その女性の左手の薬指には、大きなダイヤモンドの入った指輪が嵌められていた。

「凌ちゃん!私、結婚することになったの!」

女性ーーー塩谷(えんや)ましろが嬉しそうに言い、凌の胸はナイフで抉られたかのように痛みを発していった。



凌とましろは幼なじみという関係である。ましろはクォーターでおばあさんがドイツ人で、日本人の遺伝子よりもドイツ人のおばあさんの遺伝子を強く受け継いだため、名前は日本人だが見た目は日本人離れしている。

二人の出会いは四歳の時。凌の隣の家にましろが引っ越してきたことがきっかけだった。

「こんにちは。私、ましろって言います」

母親の後ろでどこか恥ずかしそうにしながらも、しっかりとましろは自己紹介をしてくれた。その時、凌は恋に落ちたのだ。