「晴、晴を助けて…っ」

力ない声で山田が言った。

今にも消えてしまいそうだった。

「これは俺のワガママだ!“晴”が言ったわけじゃない、“晴”は一番してほしくないって思ってる!」

「…っ」

「だけど…、晴にしか出来ないから…」

ただ下を向いているだけだった。 

その場に座り込んで立つことも出来なかった。

「……。」

でもその言葉に、ふと思い返す。


どうして私は未来(ここ)へ来たんだろう。


本当の意味を。


ずっとわからないままだった、未来へ来た本当の理由を。



そうだ、絶対意味はあるはずなんだ。



私に出来る、唯一のこと。



まだあるんだ。


絶望に打ちひしがれるために来たんじゃない、希望に変えるために来たんだよ。 


「…願ったからだ」

「…晴?」

2人を別れさせて、って願ったからこんな結末になったんじゃない。

こんなことになってしまったから願ったんだ。 


あのキッカケだって意味があったんだ。


偶然そうなったわけじゃない、そこに強い思いがあったから。



それは山田が“晴”を助けたかったから。



あの日、居合わせたかのように思ってた校舎裏も最初から決まってたんだ。



私が未来(ここ)へ来たんじゃない。

山田が私を未来(ここ)へ呼んだんだよ。



そうゆうことなんだ…!



「わかった」

「…どうした?」

きっと小西先輩が生きていれば未来が変わる。



私が未来(ここ)へ来た理由がやっと見付かった。


私は私を救うために未来(ここ)へ来たんだよ。


俯いたままだった顔を上げる。

大丈夫、もう泣かない。

「私、過去に帰る!それで絶対助けるから!」

グッと瞳に力を入れ、山田を見た。

私に出来ることはこれしかない。




「キス、してください」