「晴!雪が降ったぞ!」

朝一番、まだ布団の中にいる私に山田が呼び掛ける。

昨日はあまり眠れなかった。

うまく飲み込めないこの状況に、ただ事実をなぞるだけで涙も出なかった。

とことんひどい奴なのかもしれない。

もう何を考えたらいいのかも、わからない。

ぐーっともう一度布団の中に潜り込んだ。

「雪だるま作ろうぜ!」

なのにお構いなし大声で呼び掛けてくる。

「…え、なんて?」

「雪積もったから!」

「…山田いくつだっけ?」

「ピッチピチの21歳だけど?」

ほら早く!と言わんばかりに無理やり布団を引っ剥がされた。渋々着替え、山田が貸してくれた手袋を持って外に出た。
 
「……はぁ」

ぼーっとした頭が重くて全然そんな気分じゃないしめちゃくちゃ寒いし、あと思ったほど雪降ってないじゃん。めちゃくちゃ積もったみたいなニュアンスだったのに実際は3センチぐらいじゃん。

「手乗り雪だるまぐらいなら作れるな!」

「そこまでして作る意味あるの?」

「雪が降ったらとりあえず作るだろーが!」

雪国でもないうちの地域は滅多に雪が降らない。
降ってもすぐ溶けちゃうし、パラパラ降ればみんながわーって声を上げるレベルで、だから数センチ積もった雪はまぁすごい方ではあるんだけど。

「雪ってテンション上がるよなー」

伊織先輩の雪予報は今日は当たったのかな…

しゃがみ込んで雪を丸めてみる。
手袋をしていても冷たい。

「………。」

コロコロと小さな雪玉を転がしてみた。全然大きくならなくて雪だるまを作れる気はしない。

「晴!」

「ん?わっ!」

顔を上げたらおもっきし雪玉が飛んできた。

顔面直撃、ポロポロと雪が散っていく。

「何すんの!?」

眉を吊り上げすくっと立ち上がる。

ついでにさっきコロコロしてた雪玉を持って、目の前の山田に投げつけた。

「いや、ノーコンかよ!」

スルッと山田の横を通り抜けたけど。

「ずるい!避けないでよ!」

「避けてねぇよ、晴が下手だったんだろ!」

「ちょっとそこ立ってて!」

「立っててって言われて立ってる奴がいるかよ!」

もう一度雪玉を作って、力いっぱい投げて、全然思ったように飛んでいかなくて。

その姿にケラケラ笑った山田も同じように雪玉を作って、気付けば謎にヒートアップしちゃってた。

雪だるま作ろうって言ったのに雪玉ばっか作って投げ合ってた。

寒かったのも最初だけ、いつの間にか汗かくほどハシャいで、天気は雪から晴れに変わっていた。

「痛っ!でも顔面はセーフだから!」

「痛がっといてセーフって意味わかんないんだけど!」

「逆にポイント2倍!」

「いつからポイント制だったの!?」