「…昨日もオムライスじゃなかったっけ?」

「い、いいじゃん!オムライスおいしいし!」

私の料理レパートリーはオムライスかチキンライスの2択しかない、今日も卵があったからオムライスになった。

「まぁ、いーけどな食えれば何でも」

仕事から帰って来た山田がふぁーっとあくびをしながらテーブルの上に箸やコップを並べた。

未来(こっち)の私が普段この家で使ってるであろう、箸にコップにお皿には今や未来(いま)の私のものになっていた。

未来(こっち)の私が知ったら怒るんじゃないかなって思いながらも気付けばすっかりな馴染んでしまった。

「最近、晴何してんの?」

「えっ」

「何だよその顔、鳩が豆鉄砲を食ったみたいな」

「そんな顔してないし!」

シャコシャコと卵を溶く。
卵の溶くスピードだけは早くなった。

「帰り方見付かった?」

「…まだわかんないけど」

「電柱に張り紙でもしとくか?帰り方探してますって」

「そんな犬のポチが行方不明みたいなノリで言わないで!」

帰り方、もちろん探してないわけじゃない。

行き詰ってるだけで。

まだあの可能性が消えたわけじゃないし。

「ねぇ山田って花好き?」

「何だよ、いきなり」

「好きじゃないよね」

「決めつけんなよ」

帰ることが私の目的なのは第一、でもじゃあどうして未来(こっち)へ来たのかな。明確な理由はどこにあるんだろう。

ここで毎日オムライス作ってていいのかなって思う自分と、伊織先輩に会えて嬉しい自分もいて、混ざってはいけないものが共存してる。

なんて上の空で作ったオムライスの卵はひしゃげてしまった。

山田がめっちゃ笑いながら食べてた。