見覚えのある通りを何気なしに歩き進める。

目的はないけど、ついつい吸い寄せられるように向かってしまうのは行き慣れたあの場所だった。

「ないっ!!!」

所詮高校生の私たちのたまり場だった、ボッロボロの。

「いや、あるけどないっ!!!」

行きつけだったあのカラオケは別のカラオケに変わっていた。

建物は確かにそう、だけど面影なくキレイに作り直されている。

5年はもたなかったんだね、あのカラオケ…

「…あ、ゲーセンは!?」

“アームの壊れたUFOキャッチャーしようぜ!”

山田がよく行ってたゲームセンター、私も何度か行ったことがある。

感度がおかしくて簡単に取れたり、急に難しくなったりしてた…!

「…ここもないんだ」

気になって走ってきてしまったけど、UFOキャッチャーどころかゲーセンもなかった。

初めて聞く名前の薬局になってた。

5年前はこんな薬局見たことなかった、今流行ってるのかな。

「……。」

山田が言うにはあの日、私が消えた時。

一瞬で帰って来たって言ってたけど、こっちの時間と過去の時間では流れ方はどうなってるのかな。

別物なのかな。

それとも今の私の行動ですでに未来が変わってたりするのかな…?

帰れることはわかったけど、どうやって帰ったらいいのかわからなくて。

私の好きだったものは形を変えて消えている。

未来の世界って寂しい。

伊織先輩にも会えないし。

「…帰ろう」

それでも帰れる場所があるだけいい。

一呼吸置いてまた歩き出した。