「これ可愛くないですか?」

「あ、本当だ可愛い」

「絶対似合いますよ!」

「え、私に?晴ちゃんの方が似合うと思うよ」

「そんなことないですよ、このロングワンピは優月先輩のが合いますよ!」

21歳になった冬、女子大生として青春謳歌中の椎葉晴です。

バーゲン中の服屋さんであーでもないこーでもないって言いながら、服を探してます。

「じゃあお揃いにしませんか?」

「わ、いいね!今度一緒に着て遊ぼうか!」

色違いのワンピースをお互い手に取った。このままレジに持っていこうと振り返る。

「いつまで待たせんだよ」

「優月に晴ちゃん、欲しいのは決まった?」

こうも対照的な表情になれるのかってぐらい、全く違う顔をしてた。

「なんでそんな言い方しかできないのかなー、伊織先輩はこんなに穏やかに笑ってらっしゃるのに」

「ちょっと待ってからもう50分経ってんだよ、十分優しいだろーが」

「行きましょう、優月先輩!お会計に!」

スッと優月先輩の背中を押して今度こそレジに向かう。ささっと2人の元を離れて、レジの列に並んだ。

「晴ちゃんたち仲いいね」

「そんなことないですよ。伊織先輩はあんなに優しくて優月先輩が羨ましいです!」

「晴ちゃんの彼だって優しいじゃない、晴ちゃんたちお似合いだと思うよ」

優月先輩がふふっと笑った。


笑ってる。



今、私の隣で。



これもあの頃の私にはきっと想像できなかった未来。



「お待たせ!」

すぐにお会計を済ませてお店の外まで戻ると、笑い合って話す2人がいた。何を話してるのかはわからなかったけど楽しそうで、そんな2人の間に入っていくのが少しもったいない気持ちになった。

「おぅ、じゃあ行くか」

声を掛けたら2人の会話は終わっちゃったのがちょっと残念だった。まぁでも、2人がそうやって話してるのを見るものいいね。

「伊織先輩、優月先輩、今日はありがとうございました!」

「ううん、こちらこそ。優月が晴ちゃんと買い物したいって言ったから」

「今度買ったワンピース着ようね」

「はいっ!」

ばいばいと手を振って別れた。


伊織先輩と小西先輩は目を合わせ、微笑んで、幸せそうに手を繋いだ。


そんな2人の後姿を見ながら見送った。

「…優月先輩いい人だよね」

「昔あんな嫌ってたのにか」

「伊織先輩の言ってた通りだったもん」

「は、何が?」

“優月も生きてたらきっと晴ちゃんと仲良くなったと思うから”

「あ、晴ちゃん山田くん!」

伊織先輩が足を止めて振り返った。

「今日はこれから寒くなるから気を付けてね!」

「はいっ!」

伊織先輩の夢は続いてる、優月先輩と一緒に。
それはきっと私では叶えられなかった。