痛…っ


派手に踏み外しちゃった…

20センチなめてた。

おもっきし打ち付けられた感じがする。

こんな寝転がる状態になるほど豪快に落ちるなんて。

やばい、体中が痛い。

寒いし、恥ずかしいし、もう最悪。

ゆっくりと目を開けて、のそっと体を起こした。


「………え?」


1番に目に入ったのはトイレだった。

真っ白な壁に水色のタイルが散りばめられたデザインの建物はピカピカに磨かれ、ライトまで設置されたおしゃれな公園にあるようなトイレになっていた。

「え、何?さっきまでボロボロだったじゃん…」

キョロキョロと見渡すと、トイレだけじゃなく古びたベンチは可愛いガーデンベンチに変わっていて、殺風景だった花壇には色とりどりのパンジーの花が咲いていた。

さらに自販機には見たことない飲み物がNEWの文字と共に販売されていた。

頭が追い付かない。

間違いなく校舎裏のはずなのに、私の知ってる校舎裏じゃない。


ここはどこ?何なの?


無駄に心臓が鳴り始める。


あ、てゆーか山田は!?


ずっと一緒にいたはず…!

「大丈夫?」

「やま…っ!」

気が動転して未だ地べたにぺたんっと座ったまま、声がした方に顔を上げた。

「どうかしたの?体調悪い?」

「…!?」

その人と目が合った。

目を丸くする私にその人も驚いた表情を見せた。

「え、山田!?」

びっくりして思わず立ち上がった。

でも立ち上がってもっとびっくりした。

いつもほとんど変わらなかった視線が明らかに私より上だった。

「背伸びてない!?」

5センチしか変わらなかったのに絶対20センチ以上あるし、なんか大人な顔立ちになってるし、制服じゃなくて作業着みたいなの着てるし!


…………は?


いろんな情報が入り込んできて、思考が止まる。

「…なんで俺の名前知ってるの?あ、名札か」

いやいやいや、名札なんか今初めて目に入ったよ!

その名札には“山田瞬”の他に“水道修理屋本舗”と書かれていた。

「いつからそこにいた?俺、ずっとここで作業してたけど気付かなかったわ」

…私ずっとここにいた。

でも絶対ここじゃない。

こんなとこ知らない。

ハッとしてすぐに制服のスカートのポケットに入れたスマホを取り出した。



―2027年1月7日16:45



スマホの不具合なんてよくあることだし、ちょっと年号がズレてたぐらいどうってこと…


ないって思えなかった。