「星出さんは虹叶くんに買わないんですか?」

「え…、どうして?」

そんなこと考えたことなかったから。

だから、ただ単純にそう思っただけなんだけど。

「大事なパートナーじゃないですか」

一点の曇りもない瞳で、真っすぐ前を見てる。

純粋でひたむきで、これが初ちゃんのいいところ。

虹叶もそんな初ちゃんのことが好きだったのかな。


あたしには足りない、そんなところが。


「そうだね、考えてみるよ」

こんな時もこんな言葉しか返せないんだから。

ブブッと初ちゃんのコートのポケットに入ったスマホが鳴った。

きっと鮫上からだ。
待ち切れなくて連絡してきたんだ。

「そろそろ行ったら?待ってるでしょ」

また頬を染めた初ちゃんが微笑む。

「はいっ!じゃあ星出さん、よいお年を!」

天真爛漫で初ちゃんの笑顔はみんなを変えていく力がある。

あたしも…、そんな風になれたらいいのに。

ばいばいと手を振って初ちゃんがお店から出ていく。

出た瞬間、走り出してそんなに早く鮫上に会いたいんだって思ったり。

初ちゃんにとって今日はどんなクリスマスになるんだろう。

それはそれは幸せな聖なる夜になるのかな。

「…羨ましいな」

窓の外を見ながら頬杖をついて、はぁっと出た息と共に出た言葉。




あたしはずっと初ちゃんが羨ましい。