「きょうくん……まって……まじでむり……運動神経ゴミなのわたし……」




恭くんに手を引かれるがままに走り続けて十分ほど。

とうとう耐えきれなくなって死にそうな声を上げれば、恭くんはようやく足を止めた。




「……ごめん」


「あの、恭くんはなぜここに……仕事では……」


「終わって、事務所に戻る途中だったんだけど……瑞紀ちゃんを見かけて思わず。瑞紀ちゃんは清水くんと二人だったみたいだけど、今日高森さんは?」


「え……真緒ならお手洗いに行ってて……そろそろ数馬と合流してるはず……」


「あ、そっか。……なんだ、本当にデートじゃなくていつも通り三人だったんだ」




そう言いながら、恭くんはいまだにわたしの手をつかんだままなのに気が付いて、少し気まずそうに離した。

わたしは呼吸を整えつつ……なかなか整わなくて本気で苦しいけど一生懸命深呼吸しつつ、ゆっくり顔を上げた。




「あ……きれい……」




今いるのは、元々いた公園からは結構上った高台。

目の前には真っ赤な夕焼けが広がっていた。

ここまで綺麗な空を見たのは久しぶりで、何だか見惚れてしまう。