俺は早坂さんの返事を最後まで聞かずに車を降りた。


一直線に、二人がいる公園のベンチまで走る。


彼女のすぐそこまで駆け寄ったのと同時に、瑞紀ちゃんがこちらを振り返った。




「きょうく……天羽くん……?」




呆気にとられる彼女を前に、言葉を詰まらせる。


……どうしたものか。

夢中で走って来たけど、その後のことを何も考えていなかった。


だけど、ここまできたら仕方がない。

俺は彼女の手を掴んで、一言「来て」と言って引っ張る。


一昨日はうっかり振り払われてしまったけど、今回は離さない。




「お、おい天羽! 待てよ!」




後ろから、呼び止める清水数馬の声が聞こえる。


……ごめんね清水くん。キミが瑞紀ちゃんに想いを寄せているのは知ってるけど、こっちも譲れないんだ。


心の中で一応そう謝罪して、俺は走るスピードをさらに速めた。