「新しい恋か……。一理あるかもだけど」




問題は、新しい恋なんてしようと思ってできるものでもないところ。

二年前舞台で恭くんを見たときのような衝撃を、また別の誰かに受けるところが想像つかない。




「なあ武藤。お前さ、本気でオレの気持ちに気付いてない──は……?」




また何かを言いかけた数馬が、ふと動きを止めた。


その視線はわたしから少しズレた方角を向いている。




「どうしたの?」




わたしがつられるように振り返ったのと、数馬の視線の先にいたらしい人物が息を切らせて駆け寄ってきたのは、ほぼ同時だった。


今一番顔を合わせるのが気まずい人。

そのはずなのに、走るフォームもきちんと矯正されてて綺麗だな……なんて思えるわたしは、実はすごく冷静な女なのかもしれない。




「きょうく……天羽くん……?」


「来て」




思わず見とれるほどの色気を放ちながら汗を拭った恭くんは、そう言って強い力でわたしの手を引いたのだった。