▼【天羽恭】



この高校に転校してきてから数週間。

体調が格段に良くなっている自覚があった。


休み時間、業務連絡のために電話を掛けてきたマネージャーにその話をすると、彼は安心したように笑った。




『お前、無意識に他人と比べて自分を責める癖があるからな。前の学校みたいな環境は向いてなかったんだろ』


「だと思います」




これまで通っていた小中高一貫の学校。

多くの芸能人が通う学校で、活動のための環境は整えられていた。だがそれは同時に、圧倒的な才能を見せつけられる苦痛な空間でもあった。


今のごく普通の私立高校では、他に芸能人はおらず、普通の高校生らしい生活を送ることができている。

仕事で時々授業を抜けることもあったが、先生たちも気を遣ってか、むしろもっと休まなくて大丈夫なのかと聞いてくるほどだ。




『で? その学校が肌に合ってたらしいってのはわかったが、探してた例の女は見つけたのか?』




マネージャーは興味津々といった様子でそう聞いてくる。電話越しでもニヤニヤした顔が目に浮かぶ。