わたしは一つ咳払いをしてから言う。




「あのね、恭くんはファンに対してすっごく誠実だって有名なの。ファンに手を出すようなことは絶対しない」


「……」


「それに考えてみてよ! わたしは確かに、多少可愛い方に分類されることもあるけど、芸能界にはもっともーーっと可愛い子がゴロゴロいるんだよ! わたしの顔なんて、恭くんからはキャベツぐらいにしか見えてないって!」


「は? キャベツ……?」




戸惑いを隠さない数馬。わたしは鼻息荒くうなずいた。

その時だった。




「ふふ、やっぱり面白いなぁ武藤さん。でも、さすがに野菜には見えないかな」




わたしたちの会話に乱入する声があった。

誰の声かを確認するまでもなく、脊髄反射でびくっとなる。

廊下に立つ恭くんは、開いていた窓から教室にいるわたしたちをのぞき込んで微笑んでいた。




「ええと、そっちの彼……」


「清水」




恭くんからの視線を受けて、数馬はそっけなく名乗る。




「清水くん。清水くんは、武藤さんの恋人?」


「違う違う違う! 数馬は親友なの! わたし恋人なんていない! いたことないし!」