「『当然だよ。きみがいない世界じゃ生きていけなくなった責任、取ってほしいぐらいだ』」
恭くんのそのセリフの後、二人は見つめ合う。
そして二人の顔がゆっくり近づいて。
唇が触れそうに……
……なったところで、ぶわあっと紙吹雪が舞い、幕が下りた。
劇場は、大きな大きな拍手に包まれる。
「やばい! キュンキュンしたあ!」
「麗華ちゃん演技上手だったね」
拍手に混じってそんな声も聞こえてくる。
うん。本当に。
無事に成功して良かった。
わたし自身も良い演劇に触れて、ものすごく満たされた。
本当に満たされた。
……その、はずなのに。
「……いいなぁ」
なぜだろう。満たされた気持ちとは別に、なんだかもやっとしたものが胸につっかえている。
羨ましい。あの場所に立てる原さんが、恭くんが、羨ましくてたまらない。
役者を辞めて以来、こんな気持ちになったのは初めてのことだった。