その台本は、たくさんの付箋が貼られており、赤ペンでびっしりと書き込みがあった。
「監督たちから言われたこと、反発してるみたいだったけど、ちゃんと全部メモしてたんですね」
「……いいから返して」
原さんは、わたしの手からひったくるように台本を奪う。
「『最後まで真剣に取り組め』って、あなたに言われなくたってそのつもりだったわ。ファンの子たちをガッカリさせたくないもの」
「ですよね。原さんはきっとそんな人だと思いました」
「……やけにわかった風じゃない」
「わたしも流行りもの好きな女子高生の一人ですから。原さんのSNSはよく見て、ファッションとかメイクとか参考にしてます。毎日の投稿からも、原さんがファンを大切にしてるのはわかりますよ」
わたしはそう言ってスマホを取り出し、フォローしている原麗華のアカウントを見せた。
最新の投稿には、自撮り写真と共に『今日は初舞台の初日! 楽しみます』という言葉があった。
「原さん。今すぐ戻りましょう。逃げたら絶対に、後悔します」