なぜか推しが追ってくる。




恭くんはカメラに向けて上手くポーズをとってくれる。さすがはプロだ。

「ああ゙っ」「好き」「天才!」といちいちうめき声を漏らしながらシャッターをきりまくっていたわたしは、三十枚ぐらいで手を止めて深々と頭を下げた。




「ありがとうございますっっ!! おかげさまでまたもや家宝が増えました!!」


「もういいの?」


「はい……じゅうぶんで……」




夢見心地でお礼を言うわたしに、恭くんはなぜか近づいてくる。

撮った写真見たいのかな?

……とか呑気に思っていたわたしを、恭くんはあれよあれよという間に壁際まで追い詰めて。


そのままトンっと壁に手をつき、至近距離でわたしを見下ろす。




──この体勢はそう。少女漫画定番のあれ。

KA・BE・DO・N

であった。




「ヒロイン目線の写真、とか欲しくないの?」


「ひぃぃぃ嘘なにこれ待ってやば……」




国宝級の美しいお顔が、ちょっといたずらっぽい笑みを浮かべてわたしを見下ろしている。そして近い。何より近い。

ヒロイン目線ね、なるほどヒロインからはこんな風に見えているわけですか。なるほど。

なるほど……。