クラスの男子たちが、美少女がいると言って騒いでいたのをよく覚えている。

カズはそんな中でも最初は全く興味なさげだったくせに、同じ委員会というだけでその美少女と急速に仲良くなっていた。しかも、どう見ても武藤瑞紀のことを意識している様子で。


当時の私はそれを見てすごく焦った。


だから、幼なじみをたぶらかす悪女を牽制してやる……ぐらいの気持ちで、私は瑞紀に声を掛けたのだ。




「そしたら瑞紀、めちゃくちゃ面白い子だし、何だか波長が合っていつの間にか大好きになってた。きっかけがどうであれそれは本当。──でも正直、それは瑞紀がカズのこと全く恋愛対象として見てなかったから仲良くなれたって部分もあったかもしれない」




これを言ったのは初めてだった。


昨日、一つ上のお兄ちゃんに「誰にだって知られたくないことぐらいあるから、何でもかんでも知りたがるのはよくない」と注意されて、私はすぐにこのことが頭に浮かんだ。


瑞紀が隠していた秘密とは比べ物にならないぐらい、しょぼくて薄汚くて格好悪い秘密だ。