わたしはほっと息をつく。

原麗華さん。芝居に真剣に向き合おうとしない姿は問題だったけれど、初心者として筋は決して悪くなかった。

きちんと練習を重ねていけば、女優業でもそこそこ成功できるはずだ。


わたしとしても、恭くんの出演する舞台がグダグダになることはなさそうで安心した。




『瑞紀ちゃんは今日学校で何かあった?』




恭くんは、今度はわたしに話を振った。

……単なる世間話として聞いただけで、「別にいつも通りだった」という答えを想定していたのだろう。

だけど。




「……実は、さ。真緒と数馬に、神山ミズキのこと、バレたんだよね」




黙っておこうかとも思ったけど、結局わたしは今日あったことの一部始終を話した。


真緒に無視されたくだりを話すうちに、また気持ちがズーンと重くなってくる。

だけど、電話の向こうから聞こえる静かな恭くんの相づちにはちょっと安心感を覚えた。




『そっか。なんていうか、……うちのマネージャーが本当にごめん』