「なあ武藤。……お前さ、神山愛子の娘っていうのは本当なのか?」


「えっ……」


「元子役で、天羽恭とは元々知り合いだったっていうのは?」




声が出なかった。

そんなの、学校で誰にも言ったことない。




「誰から、聞いて……」


「本当なんだな?」


「……」





ここで黙るというのはすなわち肯定するということ。

数馬はため息をついて「やっぱな……」と呟く。




「黙ってたのは……ごめん」


「いや、謝ることはない。……このことは、昨日天羽のマネージャーに聞いたんだ」


「早坂さん、に……」




頭の中に、細縁眼鏡の腹黒そうな美形男性の姿が浮かぶ。

あの人は確かに、わたしを……昔のわたしをきちんと覚えている様子だった。

わたしは彼を知らないふりしたし、ましてや昔のわたしについて口止めなんてしていないので責めることはできない。




「真緒は、武藤のことなら何でも知ってるつもりでいたからショックだったんだよ。お前が何も教えてくれなかったこと、悔しくて仕方ないみたいだ」


「……」


「あいつは子どもっぽいところがあるから、きっとしばらくあの調子じゃねえかな」