戻ってきたらもう一度声を掛けようと思ったけれど、ホームルームが始まるまで真緒は戻ってこなかった。


それだけじゃない。次の休み時間もその次の休み時間も、真緒はチャイムが鳴るとすぐに教室を出て行ってしまう。

しかも今度は一度も目が合わなかった。



理由はわからないけど避けられてるっぽい……とようやく気付いた。


昼休みも一人でそそくさと出て行ってしまったので、わたしは慌てて数馬を捕まえた。




「ねえ数馬! わたしもしかして真緒に避けられてる? 何かしちゃったかな!?」




胸ぐらに掴みかからんばかりの勢いで尋ねれば、数馬は数馬で気まずそうな顔をした。

視線をキョロキョロ彷徨わせながら、「ああ、まあ、うーん……」と煮え切らない態度。


これは絶対に事情知ってるやつだ。

もう一度「ねえ!」と詰め寄れば、数馬はガシガシと頭を掻いて周りを見た。





「教室だと人多いよな……。武藤、ちょっとこっちに」




数馬は人通りの少ない廊下の隅までわたしを連れていく。


いったい何なんだ。

……と出かかった文句は、向き合った数馬の真剣な目で引っ込んだ。