それから数日。

翠くんと口を開くことはなかった。

偶然沙和ちゃんが同じクラスでもっと仲良くなり、そして沙和ちゃんだけが今の私と翠くんの状況を知っている。

もう諦めかけていた。

分かってる、吃音だから向いてない。

そうなんだけど、さ……。

一緒に帰ってきた沙和ちゃんと玄関前で別れるちょっと前。

――みんな、パートナーとはどんな感じ? 一週間後、ペアでこれからを語るスピーチ会があるから、準備しておいてねっ。じゃあよろしくね、お邪魔しましたー。

社長の七海夫婦の声。

「スピーチかぁ。まあ気楽に行こうかな」

沙和ちゃんのその言葉が、きっと私を傷つける。

私は喋れないんだから。でも翠くんがやってくれるなんて滅相もない。

ならば、私がやる他ないじゃない。

嫌でも喋るしかなくなる。

一度聞いてみて、まあそれで考えればいい。

……なんて、甘く考えすぎているのかもしれないけれど。

彼がそんな簡単に受け入れるわけもないし。