少し待っててくれたけど、それでも言えなかった。

泣きそうになるのを堪えながら紙とシャーペンを取り出す。

「いいよもう。大丈夫でーす。そんなわざわざ紙で伝えようとか。俺、別に社長になりたいとか結婚したいとか好きな人欲しいとかで入学したわけじゃねぇし。親の勝手だからいいんだよ、むしろ楽で嬉しいわ」

だから気負わず俺諦めてくれる?

そう言った。

「じゃ、俺飯食ってくるわ」

翠くんがどこかに行ってしまう。

飯食うって言ってたから、私と食べる気ないってことだよね。

そもそもここを好きで入学したわけじゃないんだ。

結婚も社長もどうでもよかったんだ。

きっと吃音のことも、無理だよね。

デステニーとかいうやつはどうなってるの。

私と合う人じゃないじゃん。

場違いだったかな。

やっぱり私、恋しちゃダメなんだよ。

油断したらすぐ昔を忘れちゃう……。