朝なけに

「うわぁ、修羅場？」


流石の照さんも笑っていなくて。
中さんの腕を引いて、店の中に入って来る。


中さんは、照さんに腕を引かれ店に入っては来たが、呆然と立ったまま。
私はそんな中さんから目が離せなくて、席から立ち上がった。


「中さん、ごめんなさい、私」


そう謝るけど、私は本当に悪い事をしたと思っているのだろうか。


「お前…何してんだよ？」


その中さんの言葉に、どう返事をしていいのか分からない。
私は一体何しているのだろうか？


私はただ、修司さんに真湖さんが中さんの事をどう思っているのか知っていたら、聞きたかった。
そしたら、真湖さん本人が居て。


「もしも私が少しでも中に気持ちがあるなら、この子は身を引くんだって」


何も言わない私の代わりに、真湖さんが言葉にした。


「だからさ、私はこれっぽっちも中に気持ちなんてないから安心してってこの子に言ってて」


「辞めて！中さんを傷付けないで！」


声を荒げる私に、真湖さんは冷たい視線を寄越すだけ。


「中、マジで目を覚ませよ。
こんな女に何を執着しての？」


照さんは口調こそは穏やかだけど、私と同じように怒っているのが分かる。



「執着…」


中さんは、私から真湖さんの方に視線を向けた。
自分の気持ちを確かめるように。