朝なけに

「まあ若いから、中の事なんてすぐに忘れて他の男を好きになるんだろうね？」


「…中さんの事をそんなにすぐに忘れないと思います。
でも、一生思い続けて行くかは分からないですが。
いつか他の人を好きになるかもしれませんし…。
ただ、自分でもすぐにって事はないのは分かります。
私、中さんの事が本当に好きで」


「あっそ」

そう鼻で笑われる。


「真湖さんは、なんで中さんじゃ駄目なんですか？
中さん、一夜さんにそっくりなんですよね？」


「パッと見はよく似てるけど、そっくりではないかなぁ。
中の方が背は高いし、中の顔の方がイケメンだし」


「じゃあ、なんで？」


「なに？あなたは中の顔だけが好きなの？
中、見てくれいいもんね」


「そういうわけじゃ…」


「でも、中と一緒に居てつまんなくない？
一夜と比べたら、本当につまんない」


その言葉に、自分の中にある感情のブレーキが壊れてしまう。
きっと、この人が中さんが好きな人じゃなければ、ただムカツクくらいなのだろうけど。
この人が中さんの事をそんな風に言うなんて、許せない。


「何がそんなに中さんよりも一夜さんの方がいいのですか？
私、一夜さんの事よく知らないけど、ヤクザだし！
最後は殺されてって。
そうやって殺されるような事をしてた人なんでしょ？！」


真湖さんの挑発に乗ってるんだと分かっているけど、
そうやって言い返してしまう。
真湖さんを傷付けようと言ってはいけない言葉も口にしているのだと分かっている。
なのに、真湖さんがそんな私の言葉に特に腹を立てたり傷付いた様子はなくて、それに安心してしまう。


その時、お店の扉が開いて、そちらに反射的に目を向けてしまった。
そこには、中さんと照さんが立っていて、それを見た私よりも中さんは驚いた顔をしている。