幸運なことに、すべてを奪われるまでに字は学んでいた。童話や児童向けの小説なら読んでいた。だから、すべてを奪われてから本を読んで知識を得た。お話や小説、ノウハウ本や雑学本などなど、図書館で借りたり雇われた先の屋敷で借りたりして仕事の合間に読んだ。

 それこそ、貪り読んだ。

 それがあったからこそ、常識的があって「マナーの神」と呼ばれてもいいような、いまのわたしがある。

 そうよね。昼間は、サンドイッチやスイーツを作ってもらい、本をいっぱい持って森へ行こう。

 森林浴と日光浴をしながら、本を読むの。

 いい考えだわ。

 古びた宮殿の探検を終えると、庭園に出てみた。

 いつの間にか暗くなっている。

 ウオーレンの姿が見えない。

 そのまま石造りの建物ぞいにグルッと外を散歩してみた。

 そういえば、昨夜ここにやってきたとき、ウオーレンはどこかから帰ってきたみたいだったわね。もしかしたら、今日みたいに庭仕事でもしていたのかしら。

 ジワリジワリと闇が忍び寄ってくる。

 ウオーレン一人だと灯火も必要ないのか、古びた宮殿の外には灯りがまったくまったく設置されていない。それでも、頭上の月のお蔭で歩くのに困らない。
 歩く速度を速め、古い宮殿の裏側にあたるであろう方角へズンズンと歩いて行った。

 すると、ほどなくして厩舎が見えてきた。