事の発端は、このスカンラン帝国とわたしの祖国クルーズ王国との諍いだった。

 軍事行動を起こしたのはスカンラン帝国だけれど、そもそもクルーズ王国が協定を破ったことがきっかけだった。

 大陸一と謳われるスカンラン帝国軍は、あっという間にクルーズ王国の王都まで迫った。

 そこで、クルーズ王国の国王とスカンラン帝国軍を率いる大将軍、つまりメイナードが秘密裏に会って歩み寄ろうということになったらしい。

 というのも、クルーズ王国の国王、つまりわたしのお父様とメイナードは旧知の仲だから、歩み寄れる可能性は充分考えられたのだ。

 というわけで、両国の宰相の同意もあり、王族が逃げ込んでいる王都外の別荘で秘密裏に会った。

 メイナードは自分が一番信頼する育て子のウオーレンを連れ、別荘で国王一家としばしときをすごした。

 じつは、それは罠だった。

 両国の宰相が仕組んだ罠だった。

 クルーズ王国の宰相は、わが身や一族の身の安全とスカンラン帝国での地位を得る為に王族を、というよりかはクルーズ王国を売ったのだ。

 そして、スカンラン帝国の宰相は、力のあるメイナードとウオーレンを葬る為に手を組んだ。

 王族とメイナードとウオーレン。彼らがことごとく死ねば、筋書きはどうとでも描ける。

 そんな陰謀により、別荘は両国の宰相の兵たちに囲まれた。そして、火が放たれた。

 火はあっという間に別荘を包み込んだ。