「ドラゴンでも即死だ」

 宰相は、この小さな薬袋の中身について断言した。しかも、頭を光らせつつ自慢げにである。

 この世にドラゴンが狩り尽くされて何百年と経っている。もしかすると、ドラゴンはいまだにどこか遠くの大陸の端っこの方で隠れ棲んでいるのかもしれない。

 宰相は、そんなドラゴンを探しだして飲ませてみたのかしら。それとも、前世が勇者で飲ませたことでもあったのかしら?

 もしくは、彼がお話にでてくる魔女かドラゴンと同じようにこの世からいなくなって久しい魔術使いで、この袋の中の薬を作ったのかしら?

 そんなわけはないわよね。

 だったら「ドラゴンでも即死だ」だなんて、話を盛りすぎているわ。

 いずれにせよ、お話にでてくるドラゴンにくらべれば、ウオーレンはずっと小さい。ドラゴン比ではずっと小さい彼なら、一粒で昇天するわよね。

 本の横に置いてある封筒を手に取った。

 この封筒には、おバカな宰相がわざわざ作成してくれた書面が入っている。