「この前の謝罪をしたいならきくぞ」

 宰相は、執務机の向こうから厳かに言った。

 あれ? 彼の名前って、なんだったっけ? 

 ドット? ダット?

 どうしても思い出せないわ。だけど侍女長が「毛がおもいっきり残念」って呼んでいたから、それでいいわよね?

「どうした? 挨拶や謝辞や謝罪は、人としての基本だぞ」

 黙っていると、彼はマナーの先生のようなことを言いだした。

「さあ、はやくしろ」

 それでも黙っていると、禿げ散らかした、もとい「毛がおもいっきり残念」な頭をフリフリ急かしてきた。