急に黙ったり、急に近付いて来たり、洸の考えることはわからない。

あんなド派手な頭して、どこにいてもわかる大声で喋るのに、どうして隣にいる私にはわからないんだろう。

「ねぇねぇねぇ瑠衣ちゃん聞いた!」

「何を?」

「宇貝・星出ペアが鮫上・倉下ペアにトレード申請した話!」

あれはちょっと前、体育祭の時だった。嵐ちゃんたちがペア交換のトレードを申し出てた。
トレードは違反ではなく、公式に認められればトレード成立で交換可能…っていう展開もあり得るらしいけど。

「あれ結構マジらしいよ!?」

目をかっぴらいた洸が自分の席に座る私に向かって言って来た。

「マジでトレード!やっちゃうかもだって!すごくない!?」

正直そんなパターン、私も考えたことがなかった。

デステニーで選ばれた相手が絶対だと思ってたし、トレードなんて発想持ってなくて、まさかそんなこと…!?

「…それってもう決まったの?」

「んーにゃ、するかも!ってだけ。でも本当にそうなったら他も申請する人出そうだよね~!」

入学した時から当たり前のように運命の相手が用意されるこの七海学園で、愛を育むのは簡単そうで難しい。

必ずしもそこに恋が生まれるとは限らないから。

でも…

「どうすんだろうね、2カップルとも。トレードなんてなったら荒れそうだけど~」

「…洸は気になるの?」

「めっちゃ気になるっしょ、瑠衣ちゃんは気にならないの?」

「私は…」

気になるよ、すっごい気になるよ!

それ聞いた洸が今どう思ってるのか気になるよ…!

「どっちでもいいかな」

「わーお、瑠衣ちゃんクールだね!」


絶対嫌ッ!!!

トレードなんてされたら絶対嫌ッ!!!

私はもう洸とじゃなきゃ…っ


早く気持ちを聞きたいのに。

こんなに一緒にいても聞くのはどうしても怖くて、今日も言えなかった。