「瑠衣ちゃん前髪切った?」

人差し指で自分のこめかみ辺りをトントンッと指差して、じぃっと私の顔を見てた。

「…切った、ちょっとだけ」

「やっぱり!?切ったかなー、切ってないかなー、どうかな~って思ったんだけど昨日とちょっと違ったから!」

「でもほんのちょっとだけだよ、数ミリとかそんな感じ!」

「でも雰囲気違って見えたよ」

自分でもこれくらいなら切らなくてもいいんじゃないかってぐらいだったけど、でも気になって切ったぐらいだったのに、気付いてくれるのは…

嬉しくなってしまう。

「あ、今送ったからカバ!」

些細なことだけど、見てくれてるんだって嬉しくなる。

パートーナーとして、私の事認めてくれてるのかなって。

まだ好きだなんて言えないけど。

早く好きって言えたらいいのに。

「あ、瑠衣ちゃんって髪の毛って何かしてる?」

「え、何で?」

「金髪にしたら髪痛んじゃってつらたんなのー」

「…そりゃそれだけ色抜いたらね」

本当に勢いでっていうか、何も考えずにっていうか、ノリで金髪にしたのかな。

どうしたって痛むよね、それは。

「界くんってどうしてるのかなー、ヘアケア何してるんだろ~!教えてほし~!」

「…そんなに凄い人なの、界くん?って」

髪の毛に負けないぐらい瞳をキラキラ輝かせて、マネするぐらいだからよっぽど好きなんだろうなと思った。

「うん、超カッコいいよ!人気者で、クールなんだけど、実は正義感が強くて困っている人を放っておけないツンデレなの!俺はあーゆう男になりたいと思ってる!」

「へぇ」

どーゆう男になりたいのか、どの部分のことを言ってるのかイマイチ汲み取れないけど洸だって十分…

「瑠衣ちゃんは?界くんみたいな人、どー思う!?」

「どうって…私少女漫画は読まないの」

「そうなの!?」

「少年漫画派だから」

「瑠衣ちゃんってそっち派なの!?」

スマホを開いてさっき送ってくれたカバの動画をお気に入りに入れた。

今日帰ったら見よう、そんなにおもしろいなら楽しみだし。

「優しいより強いのが好きなタイプか~」

洸はブツブツと何か言いながら私の少し先を歩いていた。
スマホ開いてたら足が止まっちゃって、置いてかれそうになる。

「洸!」

「ん?」

教えてもらったし、一応。

「私のでよかったらヘアオイル貸すよ!」

「マジで~~~~!」

「界くんと同じのかはわからないけど」

「全然いい!ありがとう!!」