「いや~、めっちゃ楽しかったね~!」

「…そうだね」

「惜しかったよね、あとちょっとだったもんね!」

「私のせいでね、最後落ちちゃったよね」

「でも楽しかったからいいよね!」

大きな口を開けて、これでもかって言うほどに嬉しそうに笑って…


洸が笑うたび私の中で大きくなる。


洸が好きってことが。


好きなんだけどな、好きなのに。 


ずっとドキドキしてるのに。


好き、その一言が怖くて言い出せない。


「あ、そうだ!もうすぐ冬休みだよね!瑠衣ちゃんは家帰るの?」

「うん、そのつもりだよ」

全寮制の七海学園はだいたいの生徒が実家へ帰る。

普段も自由に行き来だできるけど、長期の休みだしお母さんたちも会いたがってるしもちろん私も帰るつもり。

「そっか、じゃあちょっとの間会えないね!」

2週間ちょっと、夏休みと比べれば短いけどずっと一緒にいる洸と離れるのは…ちょっとだけ寂しい、なーんて。

「また来年だね!」

その前に、言えないかな。

伝えられない、かな。

「あのね、洸…っ」

目を合わせる。

部屋に2人きり。

しーんとした空間に、洸が瞳をパチクリさせる。

「何?」

「あの…っ」

その瞬間、ドッ!と心臓の音が大きくなって言葉が出て来なくなってしまう。

「課題やった!?」

「課題?あ、冬休みの?」

「そう!それ!冬休みの課題!!」

こうやってまた遠ざかちゃった。

あーぁ、私のいくじなし。

「俺もうやったよ!」

「え、珍しいね!早くない!?」

「うん、あー…でも!瑠衣ちゃんには俺のいない時に見てほしい!」

「…?」