「い、一応、内容だけ聞いとく」
「時給1,200円。仕事内容は俺のそばにいること」
「……はい？」
わけのわからない内容に思わず首を傾げる。
蓮見怜央のそばにいるだけで時給1,200円？
それだけでお金が貰えるほど、世の中は甘くないということを私は理解している。(……つもりだ)
これは絶対、何か裏がある。
「それってその……彼女でも探してるの？」
「は？そんなのにわざわざ金払うかよ」
そんなの、ね。確かに必要ないか。
校内で彼に近づく女子はいない。
けれど、蓮見怜央という人物がモテるということは、その端正な顔立ちを見れば容易く想像がつく。
「俺が求めてるのは姫だ」
ひ…………め…………？
「姫って、お姫様？私そんなキャラじゃないけど」
そういうのは可愛らしくて、綺麗なドレスが似合う……そう、新那のような人間だ。
私みたいにおにぎりを流し込むように食べたり、求人誌片手に廊下を歩くような人間じゃない。
それにしても、暴走族の口から『姫』なんていう可愛らしい単語が出てくるなんて意外だ。
