【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。



「じゃあ、行くよ」

「うん……!」

屋上に来るのは2回目だけど、正直1回目のことはあまり覚えていない。

あの時は呼び出された理由を探すのに必死だったもんな……。

だから扉を開ける瞬間、私も少しだけ緊張で胸がキュッとなった。


「お、お待たせ」

扉を開けて真っ先に目に入ったのは、花柄のレジャーシートの上に座る怜央の姿。


暴走族の総長と花柄のレジャーシートというミスマッチな光景に思わず「なんでレジャーシート?しかも花柄」と口にしてしまう。

「備品って書いてあったダンボールがそこに置いてあっただろ、その中にあったやつ」

そういえば扉の隣にあったような気がする。

つまり、そこから拝借したってことか。

「いつもここにシートを敷いてサボってるの?」

授業をサボっている時はだいたい屋上にいる。と怜央はこの前、行ったファミレスで話してくれた。

ここは日当たりもよく、寝転んだら気持ちが良さそうだ。


「んなめんどくせーこと、いちいちしねぇよ。今日は特別。瑠佳を地べたに座らせるわけないだろ」

……そういうの本当にずるいと思う。

特別って言葉を当たり前のように口にするのも。