「行くぞ」
どうやら、私に拒否権はないらしい。
私の返事を聞く前に歩き出した彼の背中を追うために、急いで椅子から立ち上がる。
「る、瑠佳ちゃん行くの?わ、わ、わ私も行こうか?」
「大丈夫。ここ学校だし、何かあれば逃げ出すから」
……そうならないことを願うけど。
「で、でも」
「私の心配はいいから、新那は早くパン食べちゃいな。昼休み終わっちゃうよ」
私は不安げな表情を浮かべる新那とクラスメイトたちに背を向け、急いで蓮見怜央の後を追った。
そして、着いた先は屋上。
立ち入り禁止の場所に簡単に入れる理由って……?
ああ、やめた。余計なことは考えないようにしよう。
私は彼の共犯者になるつもりはない。
ていうか、いつになったら話し出すのだろう。
ここに来るまでの間、彼はずっと無言で廊下にいた生徒たちの方がお喋りだった。
『蓮見怜央の後ろ歩いてるの、3組の子だよね?』
『あの子何かしたの?』
『彼女……って感じでもなさそうだし』
どれも私と蓮見怜央の関係を不思議に思うものばかりで、チクチクと刺さる視線はあまり気持ちの良いものではなかった。



