【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。



「ごめんね、お待たせ!」

「おう」


大した距離を走ったわけでもないのに、ドクンドクンと暴れる心臓。

落ち着かせようと深呼吸をすると隣から「そんな急ぐ必要ねぇだろ」と呆れた表情で言われた。

「怜央の姿が見えたからつい」

「は?」

「雇い主を待たせるわけにはいかないでしょ」

私がそう言うと怜央は一瞬考え込んだ後「……あー、そうだな」とつぶやいた。


「ねぇ、もう他の人たちは集まってるの?」

「昼過ぎには皆、集合したって」

「え!?それってすごく待たせてるんじゃ……」

「あいつらが勝手に先に集まってるだけだから気にすんな。そもそも細かい時間は決めてねぇし、遅れたとしても総長に文句言う奴はいねぇよ」



「でも、まぁ俺らもそろそろ行くか」怜央はそう口にすると私の頭にヘルメットを被せた。

そして、髪が絡まないように優しく後ろへと流す。

……って、ぼーっとその様子を見ている場合じゃなかった。

今日こそちゃんと言わないと。