【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。



じきに良くなるだろう。そう思って、一度止まった会話を再開する。

今度は数分前に走り去った男たちについて。

「そういえば、さっきの人たちがいい感じに噂を流してくれたらいいね。総長には姫がいるって」

「なんだよ急に」

「だって今日の一番の目的でしょ。あの人たちが噂してくれたら、私が絡まれたのにも意味があったんだなって思えるから」

「危険な目にあったつーのに、ポジティブな奴だな」

「そうかな?」

「……あ、そういやあれ渡すの忘れてた」

会話の途中、何かを思い出したようにズボンのポケットを漁る怜央。

「あった。ほら」と歩きながら渡されたのは、狼の形をしたマスコットキーホルダーだった。


手の中でコロンと転がる小さな狼は可愛いけれど無表情で、どことなく怜央に似ている。


「何これ?」

「キーホルダー型の防犯ブザー。しっぽを引っ張ると音が鳴るようにできてある」

そう言われてお尻を見てみると、しっぽの部分と胴体が離れるようになっていた。