「あ、あれよ。急に近づいてくるとかそういうの!驚くから」
「……はいはい、わかりました。でも、彼氏ならあのくらいの距離普通だろ?」
だから、その彼氏っていうのがいたことないんだって。
「…………」
「瑠佳ってもしや、」
「も、もう落ち着いたんだからゲーム始めよう」
別に恋愛経験の有無で人間の価値が決まるわけではない。
ただ彼にとっては大したことのない行動に、私だけが意識しているこの状況が少しだけ悔しかった。
それを悟られるのも嫌で、目の前に置いてあったボールを手に取る。
そして、そのままピンを目掛けてボールを放った。
自由になったボールはひょろひょろとレーンを転がると、ガコンとガターへ吸い込まれていく。
もちろん倒れたピンは0本。
背中越しに怜央の「見事なガターだったな」という声が聞こえた。
その後もガターを連発する私とは違い、連続してストライクを決める怜央。
結果は私のボロ負け。
次に向かったゲームセンターでも何一つ怜央に勝つことはできなかった。



