「あのさ、怜央」

「ん?」


狂猫との抗争から2日。

怜央と密会する場所として使っていた屋上で、一緒に昼食を食べる約束をした水瀬さんと小川さんが来るのを待っていた僕ら。

その間に僕はずっと引っかかっていたことを怜央に尋ねた。


「水瀬さんのバイト代の件だけど、やっぱり僕らも支払うよ」

水瀬さんへの給料は全て怜央が支払っていた。

僕と真宙も負担するつもりだったのに、怜央は「総長の俺が支払う」と言って僕たちからはお金を受け取らなかったからだ。


「いいって言ったろ。もう金のやり取りはしねぇし」

「今までの分だよ。櫻子を護るために水瀬さんを雇っていたんだから僕と真宙が何もしないのはおかしいだろ。真宙はいいとしても、僕は支払わないと。櫻子は僕の彼女なんだから」

「その金で櫻子とデートでもしろよ」

「でも、」

「うるせーな。俺が得したから俺が払う。それでいいんだよ」

ああ……なんだ。怜央が僕らのお金を頑なに断り続けたのはそういう理由か。