「──あの日から瑠佳は俺の中で特別だった」


怜央の言葉に私は思わず体を仰け反らせた。


「え、たったそれだけのことで?」


「他人を思いやれる心を持つことは、十分すごいことだろ。まぁ、敵の総長にまでハンカチを渡すほどとは思わなかったけど」

「……あれは」

「何もせずにはいられなかったんだろ?俺が好きになったのはそういう女だから」

“好き”その言葉が当たり前のように自分に向けられる日が来るなんて思わなかった。




「俺はお前を巻き込みたくなくて最初は別の姫を探す予定だった。でも、欲が出たんだ。どんな形でもいい。契約でも、期間限定でも瑠佳といたいって」


「……怜央」

「櫻子の手術が無事に終われば瑠佳の手を離すつもりだった。でも、それも瑠佳と過ごすうちに無理だって気づいた。櫻子を護るために、そして瑠佳と一緒にいるためには狂猫をこの手で潰す必要があったんだ」


初めて聞く怜央の本音に胸が締め付けられる。

「私も怜央のことが好き」

気づいたら私は怜央を力いっぱい抱きしめていた。