【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。



「おい!逃げても無駄だぞ」


「……もう気づかれたか。水瀬さん急ごう」

「う、うん」


居場所がバレた私たちは、ただ前だけを見つめて力の限り走る。


今は他のことを考えている余裕なんてない。


「あ、そうだ。先に言っておくけど僕、喧嘩は専門外だから」


「へ!?」


暴走族なら皆、喧嘩ぐらいしたことがあるんじゃないの……!?



後ろを走る男が1人、2人と増えて、先頭にいた男が私の肩を掴んだ。


その手を払いのけて男の腹に膝を入れる。

すると、男は両手で腹を押さえながらしゃがみこんだ。


「水瀬さんやるね」

「どーも」




狂猫の手から逃れた私たちは、ようやく2人のいる場所へとたどり着いた。


ここからが狂猫との戦いだ。


そう思っていたけれど、私たちが到着した時にはすでに2人の男が地面に倒れていた。

近くでは拘束されていたはずの志貴が大きな伸びをしていて、新那はなぜかフライパンを握りしめている。


「ど、どうなってるの?」

「あ、姉ちゃん!」

「瑠佳ちゃん!」

駆け寄ってきた2人に怪我がないことを確認してから、私は近くの椅子に腰を下ろし息を整えた。