【完全版】雇われ姫は、総長様の手によって甘やかされる。



「こんな所に連れてきてどうする気?」

男は私の質問に答えるよりも先に、骨ばった手で私の口を塞いだ。



そして、背後に回ると「5秒でいい。話すのも動くのも我慢して」と変わった要求をしてくる。

私が返事に悩んでいると男は「頼む。時間がないんだ」と続けた。


時間がないってどういうこと?


それに頼むって……。この人は狂猫の仲間じゃないの?




聞きたいことは山ほどあったけれど、私はひとまず5秒だけ男を信じることにした。

「わかった」

変な動きをするようだったら、思いっきり肩を振って反撃に出よう。


そんなことを考えている間に、私の腕を拘束していたロープがプツリと音を立て切れた。

足元にはその残骸が散らばっている。




「え…………?」



後ろを振り向くと男はマスクの前で人差し指を立て、私に声を出さないようジェスチャーで伝えてきた。

目の前にいるこの男は、一体誰なの?

拘束を解いてくれたからといって、仲間とは限らない。


それに数秒でロープを切ったってことは、この男も刃物を所持しているはず。


私は自由になった両腕を前に出して、相手を正面に見据えながら構えの姿勢を取った。