……私が傷つくだけなら我慢できる。
だけど、皆の悲しむ顔は見たくない。
そんなことを思いながら、痛みに耐えるため下唇を強く噛み締めた。
しかし、数十秒が経過しても私の体にはなんの変化も起こらない。
他の人よりも頑丈に産んでもらったとはいえ、ナイフが刺さる痛みには耐えられないだろう。
もしかして、思いとどまったの……?
一度、逸した視線を恐る恐る元へと戻す。
すると、丁度立ち上がるタイミングだった香坂と目があった。
「……香坂さんびびったんすかー」
飛んできた野次には目もくれず、力ずくで私を立たせる香坂。
「あ?お前ら聴こえなかったのか」
「聴こえるって何が……?」
複数の男たちが首を傾げた直後、耳を塞ぎたくなるような大きな音がして、薄暗い倉庫に光が指した。
振り向くと砂ぼこりが舞う中から大勢の人影が見えて、その先頭には額から大粒の汗を流し肩で息をする怜央の姿があった。
「瑠佳!」
「遅くなってごめんね。瑠佳ちゃん」
「瑠佳さん!」
「姫!!!」
怜央を先頭にして、闇狼のメンバーたちが次々と狂猫のアジトへと乗り込んでくる。
狂猫のメンバーは一斉に扉の方へと走り出し、香坂は私の腕を引いて反対方向へと歩き出した。



