『相変わらず威勢がいいね。迎えの車をやったから、アジトまで来てよ。もちろん一人で。蓮見に助けを求めたら……わかるよね?』

「怜央に連絡はしない。言うとおりする。だから、志貴には手を出さないって約束して」

『それは瑠佳ちゃんの態度次第かな。隣の女の子も君のことを待ってるよ』

香坂はそう言うと一方的に電話を切った。




隣の女の子。香坂は名前を出さなかったけれど、状況から察するに志貴と一緒にいた新那のことだろう。


私のせいで志貴だけではなく、新那まで巻き込んだ。

悔しくて、でもどうにもできなくて。


そんな自分に苛立ちを募らせていると、目の前で一台の黒いワゴン車が停車した。


「乗れ。香坂さんの所へ向かう」

運転席から顔を出した男は要件だけを短く述べる。


到着の早さからして、この男はずっと私の後をつけていたのだろう。


私は返事をする代わりに男の車へと乗り込んだ。